旅館やホテルに選ばれる天然木デッキとは?高級感・演出・集客力を一挙解説
2025.11.26
旅館やホテルにおいて、空間づくりは「滞在価値そのもの」と言えるほど大きな意味を持ちます。特に近年は、滞在中の体験や空間演出がSNSでの拡散や口コミ評価に直結するため、細部の設えにまでこだわる施設が増えています。
その中で注目されているのが、天然木を使用したデッキの導入です。無機質なタイルや樹脂素材とは異なり、天然木が持つ質感や温かみは、非日常を演出する空間素材として高い評価を得ています。実際に、高級旅館や温泉宿、リゾート型ホテルなどで採用される事例が増えており、客室露天風呂やテラス、中庭空間などに積極的に活用されています。
本記事では、天然木デッキが旅館やホテルに選ばれている理由と活用方法、素材選定のポイント、人工木との比較、導入時の注意点までを網羅的に解説します。施設運営者・設計担当者が納得のうえで選定・導入できるよう、実用性と意匠性の両面から検討材料を提供します。
天然木デッキが旅館・ホテルに選ばれる3つの理由
高級感と温かみで“非日常”を演出できる
天然木には、他の素材では再現できない独自の質感があります。光の反射や足裏の感触、さらには雨や日差しによる色の変化まで、すべてが空間に深みを与えます。
旅館やホテルが大切にする「癒し」「くつろぎ」「記憶に残る空間演出」において、天然木は非常に有効な素材です。特に露天風呂やテラスでは、木材の自然な風合いが景観に溶け込み、訪れた人に“日常では味わえない感覚”を提供します。
素材の経年変化も魅力のひとつです。使い込むほどに味わいを増す木の変化は、施設のコンセプトともなじみやすく、訪問のたびに異なる表情を見せる楽しさがあります。
滞在価値を高める空間演出が可能
天然木デッキの設置によって、宿泊体験そのものの質が大きく変わります。特に客室に隣接するプライベートな露天風呂やテラス空間では、その効果が顕著です。
●開放感と安心感を両立した客室外空間を作れる
コンクリートやタイルでは出せないぬくもりを木が補い、裸足で過ごせる快適な外部空間を実現できます。
●季節ごとの演出が可能になる
木材は気温や湿度とともに表情を変えるため、春夏秋冬の変化を感じられる空間になります。
●「また来たい」と思わせる記憶に残る設え
他施設との差別化を図り、顧客のリピート意欲を高める要因として機能します。
施設運営側から見れば、「単なる床材」ではなく「顧客体験を演出する装置」としての意味を持つのが天然木デッキです。
SNS映え・写真映えによる集客効果も
旅行者の多くがSNSを活用する現在、「写真に残る空間かどうか」は集客に直結します。天然木デッキは、その自然な風合いが写真や動画でも際立ち、インスタグラムやXなどの投稿素材として人気です。
●自然光に映える素材で、投稿されやすい
特に朝日や夕焼けとの相性が良く、スマートフォンでも映える写真が撮影できます。
●非日常性の高さがコンテンツ化に向く
「旅先での特別なひととき」を伝える素材として、木材は強い訴求力を持ちます。
●無意識のうちに口コミ効果が発生する
宿泊者が自発的にSNS投稿することで、無料の宣伝効果が期待できます。
こうした理由から、マーケティングの視点でも天然木の導入は有利に働きます。単に「高級感がある」だけでなく、「写真に残り、記憶に残る空間を作れる」素材であることが選ばれる理由です。
天然木デッキが使われる具体的な場所とその効果
客室露天風呂のデッキ
客室露天風呂に天然木デッキを導入することで、滞在体験の質が大きく向上します。利用者は、風呂上がりに裸足でそのまま出られる快適性と、自然との一体感を味わうことができます。
●裸足で歩ける心地よさ
天然木は熱伝導率が低く、夏でも熱くなりにくく、冬も冷たさを感じにくいため、肌に優しい素材です。
●温泉との相性が非常に良い
湯気や湿度を含んだ環境下でも、天然木の質感や色味は調和しやすく、落ち着いた雰囲気を生み出します。
●プライベート感を高める空間構成が可能
客室専用の露天風呂に木デッキを設けることで、外との自然なつながりを感じさせながら、視覚的な境界線を設けられます。
高級旅館の客室では、天然木の床を採用して「水音・風・木の香り」が調和する空間が標準化されつつあります。素材としての安心感と情緒的価値が共存する設えです。
テラス・中庭空間のデッキ
共用のテラスや中庭に設置された天然木デッキは、滞在中の「立ち寄りスポット」として宿泊者に好まれます。リゾートホテルや温泉地の旅館では、客室内だけでなく共有スペースでも木材が活躍します。
●自然と調和したデザインが可能
庭園や池などと木材がなじみやすく、植栽や自然素材との一体感を生み出せます。
●屋外でも耐久性を発揮する樹種が選べる
イペやウリンなど、高耐久性を持つ木材を選定することで、雨風にさらされる場所でも美観を維持できます。
●サードプレイス的な価値を持たせやすい
休憩、読書、撮影など、宿泊者が自由に時間を過ごせる空間を演出でき、顧客満足度が高まります。
導線上に設けることで滞在中の移動そのものが心地よい体験となり、「歩いて気持ちいい宿」として印象に残る仕掛けにもなります。
ロビーや共用部の演出素材として
チェックイン直後、宿泊者が最初に目にするロビーや共用スペースも、施設全体の印象を決定づける重要な空間です。ここに天然木を取り入れることで、第一印象の質を格段に高めることができます。
●視覚的な安心感・高級感を与える
無機質な素材と比べ、木の持つ自然な色合いは視覚にやわらかく響き、落ち着いた空気を演出します。
●ブランドイメージとの一貫性が持てる
「和の趣」「自然との調和」をテーマとした宿泊施設では、ロビーに木を使うことでブランド体験に統一感が生まれます。
●音響効果にも貢献
木材は音の反響を抑えるため、静かで品のある空間設計にも有効です。
共用スペースにおける素材の選定は、施設全体の印象に直結します。天然木の導入は、五感を通じて「質の高さ」を伝える戦略のひとつとなります。
素材としての「天然木」の種類と選び方
耐久性・防腐性に優れた樹種一覧
旅館やホテルで使用する木材は、雨や湿気にさらされることが多く、耐久性が重視されます。以下のような高耐久性のハードウッドがよく選ばれています。
●ウリン
東南アジア原産の超高耐久木材。耐水性・防腐性に優れ、虫害にも強い。重厚で高級感のある色合いが特徴です。
●イペ
南米産の高耐久木材で、公共施設でも多数の実績があります。色味は深いブラウンで、経年変化も美しく、堅牢性が高い素材です。
●セランガンバツ
東南アジア産のコストパフォーマンスに優れた木材。ウリンやイペより軽量で扱いやすく、明るめの色合いも魅力です。
●国産スギ(加圧注入処理品)
加圧防腐処理を施すことで、屋外使用にも対応可能。軽量で加工しやすく、地域性や国産材へのこだわりが求められる施設に適しています。
これらの木材は、使用場所やメンテナンス体制に合わせて選定することで、耐久性と景観のバランスが取れます。
木目や色味で選ぶ意匠性重視の選定法
演出効果を重視する場面では、木材の見た目や風合いが選定の基準になります。空間のデザインテーマに合わせて、色味や木目を選ぶことで統一感のある演出が可能です。
●イタウバ
南米産で、やや緑がかった独特の色味と美しい木目が特徴。ナチュラルで柔らかい印象を持たせたい施設に適しています。
●アカシア
木目が力強く、ダイナミックな演出に向いています。ラグジュアリーな空間にも調和しやすい素材です。
●レッドシダー(米杉)
色の濃淡が美しく、香りも特徴的。軽量で加工性に優れており、自然な風合いを重視する施設に選ばれます。
デザインやブランドイメージに直結するため、単に耐久性だけでなく、見た目の印象にも配慮した選定が重要です。
メンテナンス性・経年変化の視点も忘れずに
天然木は時間とともに変化する素材です。その特性を理解し、適切なメンテナンス体制を整えることで、美観を長く維持できます。
●経年によるグレー化
無塗装のまま使用すると、数ヶ月〜数年で銀白色(シルバーグレー)に変化します。これは劣化ではなく自然な変化であり、風合いとして好まれるケースもあります。
●塗装による色味の維持も可能
年に1〜2回の塗装を行えば、当初の色味を保つこともできます。施設の演出方針に応じて選べます。
●清掃のしやすさにも配慮
木の表面を滑らかに仕上げ、適度な通気性を確保することで、カビや腐食を防ぎやすくなります。
天然木の経年変化は“劣化”ではなく“熟成”です。これを演出として活かすか、維持管理で抑えるかは施設のコンセプトによって選択できます。
天然木 vs 人工木(樹脂木):旅館・ホテルではどちらを選ぶべきか
旅館やホテルの屋外空間に使用するデッキ材としては、天然木と人工木(樹脂木)の2つが主流です。それぞれの特徴を比較し、施設に適した素材選定の基準を整理します。
高級感・本物感で選ぶなら天然木
顧客が感じる空間の「本物感」は、素材の質に大きく左右されます。天然木は、その自然な風合いと香り、質感によって、明確な高級感を演出できます。
●視覚・触覚に訴える素材
木目や色味のランダムさ、経年による変化などが、人工素材では再現できない「リアルな質感」をもたらします。
●裸足で歩いて気持ちよい
露天風呂付き客室やプライベートテラスでは、足裏に感じるぬくもりが顧客満足に直結します。
●宿泊体験を差別化できる
樹脂木では「無難さ」は担保できても、「印象に残る非日常」は演出しにくくなります。特に高価格帯の宿泊施設では、天然素材の使用が信頼感につながります。
宿の世界観や顧客体験を重視するなら、天然木は圧倒的に優位な選択肢となります。
メンテナンス・コスト面では人工木に軍配
人工木は木粉と樹脂を混合して作られた複合素材で、施工後のメンテナンスが軽減されることから、管理コストを重視する施設に適しています。
●腐食・ささくれが発生しにくい
水や湿気による劣化が少なく、裸足での使用時にも安全性が高いとされています。
●定期的な塗装が不要
紫外線や雨に強く、色褪せに強い製品が多いため、維持コストが抑えられます。
●施工後の安定性が高い
形状や厚みが安定しており、施工しやすく、ロット間の品質差も少ないという特徴があります。
ただし、質感はややプラスチック的で、人工物らしさが目立つケースもあります。選定にあたっては、意匠性とのバランスが求められます。
商業施設での使用実績・傾向を参考に判断
実際に高級宿泊施設では、演出性の高いエリアに天然木を採用し、管理頻度の高い共用通路などには人工木を使い分けるケースが一般的です。
●天然木の使用傾向
露天風呂付き客室、眺望テラス、離れの宿など、空間そのものが“体験”になる場所で使われています。
●人工木の使用傾向
通路や館内導線、日常的に多くの人が行き交う場所では、維持管理の手間を最小限に抑える目的で選ばれています。
●組み合わせ採用の事例も増加
エリアごとに最適な素材を使い分けることで、コストと演出を両立する設計が主流になっています。
素材の一括選定ではなく、“使う場所と目的に応じた素材選定”が、現代の旅館・ホテルにおける標準的な考え方となっています。
導入前に押さえておきたい注意点と設計のポイント
天然木デッキを導入する際には、美観や演出性だけでなく、施工・維持面まで考慮した設計が求められます。トラブルや劣化を防ぐために、事前に確認すべき重要事項を整理します。
排水・防滑・通気性など屋外施工に不可欠な条件
屋外に設置される天然木デッキでは、安全性と耐久性の確保が第一条件です。以下のポイントを押さえて設計・施工を行う必要があります。
●適切な勾配と排水計画の設計
水たまりや湿気の滞留を防ぐため、デッキ面に1〜2%の勾配を確保し、排水処理を施すことが重要です。
●防滑仕上げ・ささくれ対策の徹底
表面に滑り止め加工を施すほか、定期的な点検・メンテナンスによって、ささくれの発生を防ぎます。
●通気性・乾燥性の確保
根太の設計や地面との隙間を確保することで、木材内部の通気性を高め、腐朽のリスクを下げます。
こうした施工品質の確保は、快適性だけでなく、施設としての安全責任にも直結する重要事項です。
製品保証・メンテナンス契約の有無を確認
導入後のトラブルを未然に防ぐためには、施工業者や資材メーカーとの契約内容にも注意が必要です。
●耐久年数・保証内容の確認
使用する木材の保証年数(例:10年耐久保証)や、保証対象範囲を明確にすることで、長期運用時のリスクを減らせます。
●定期メンテナンス契約の有無
木材の状態を維持するために、清掃・塗装・点検などを含む年間契約を締結する施設が増えています。
●施工業者の実績・対応力も重視
観光施設や宿泊施設での施工実績がある業者を選ぶことで、運用面まで想定した設計提案が受けられます。
導入前にこうした条件を整理し、設計から維持まで一貫して任せられるパートナー選定が不可欠です。
木材調達の安定性と環境配慮にも目を向ける
近年では、素材調達においても「環境配慮」「調達リスクの回避」が求められています。
●安定供給可能な輸入ルートの確認
天然木の多くは海外産のため、供給の安定性が重要です。流通実績のある輸入商社を通じた調達が推奨されます。
●合法伐採・FSC認証材の活用
持続可能な森林資源の利用として、環境認証材(FSC、PEFC)を選定することで、企業としての社会的責任にも対応できます。
●国産材活用による地域性訴求
国産スギやヒノキなど、地域産材を使用することで、地元資源を活かした宿としてのブランディングにもつながります。
持続可能性とブランディングの両立は、現代の宿泊施設にとって避けて通れないテーマです。木材選定においてもその視点を持つことが重要です。
まとめ

天然木デッキは、旅館やホテルにとって単なる「床材」ではなく、空間全体の価値を高めるための演出素材です。その質感や温かみは、他の素材にはない“非日常体験”を宿泊者に提供できます。
特に、客室露天風呂やプライベートテラスといった印象に残る空間においては、木の自然な表情がリピート率や満足度に直結します。また、SNS映えを意識した空間づくりとしても、天然木のもつ意匠性は効果的に働きます。
導入を検討する際には、以下のような点を整理すると判断しやすくなります。
●高級感・顧客体験を重視する空間には天然木が最適
●メンテナンスやコストを重視する共用部には人工木も有効
●用途に応じた素材の使い分けが最も合理的
●耐久性・意匠性・施工条件を事前に確認することが重要
素材の選定から設計、施工、維持管理まで一貫して考えることで、天然木デッキは長期的な施設価値を支える資産になります。
これから宿泊施設のリニューアルや新設を検討している方は、空間演出の要素として「天然木デッキ」を積極的に取り入れることをおすすめします。施設の印象を一段と高め、選ばれる宿づくりにつながるはずです。