地域材は本当にコスト高?SDGsとコストを両立する天然木ウッドデッキ
2025.04.17

建築業界における「地域材」の活用は、これまで主にCSR(企業の社会的責任)の一環として位置付けられていました。地域への貢献や環境への配慮といった価値は確かに重要です。
しかし、今や地域材の利用は善意や理想論にとどまりません。経営的な視点からも合理的な選択肢として注目されつつあります。
地域材を活用することで建材コストの削減や物流効率の向上、施工期間の短縮も期待できます。加えて、各自治体の補助制度の存在も、導入のハードルを大きく下げる要因となっています。
加えて、ノンビス工法・ノンケミカル仕様といった先進的な技術を取り入れた天然木ウッドデッキのように、意匠性と施工性、そして環境性を兼ね備えた製品が登場したことで、地域材の魅力はさらに広がりを見せています。
「地域材=CSR」という一面的な捉え方を超え、実際に導入する価値のある経営判断であることを、事例や具体的な視点から解説していきます。
地域材活用はCSRだけではない:経営判断としての合理性
地域材の利用は、「社会貢献の一環」というイメージが強く、実務面での導入に慎重になる設計者や経営者も少なくありません。
しかし実際には明確なメリットが存在し、経営判断としても十分に合理的な選択といえます。
●建材コストの圧縮が可能
地域材は流通経路が短いため中間マージンや輸送費が削減される傾向にあります。
●輸送効率が向上する
近隣で生産されるため納品がスムーズで資材の管理も柔軟に対応できます。
●地域の補助金制度を活用できる
自治体によっては地域材の使用に対して補助金や税制優遇を用意しています。
●施工期間の短縮につながる
輸送リスクの軽減により資材到着の遅延リスクが低く、スケジュール管理が容易になります。
●顧客への訴求力が高まる
「地産地消」や「地域貢献」を意識する顧客にとって建物の価値を高める要素となります。
このように、地域材活用はCSRに留まらず経営にポジティブな影響を与えます。
建材コストの圧縮と輸送効率の向上
地域材を使用する最大のメリットは建材コストの圧縮です。木材は重量があるため、輸送距離が長くなるほど運搬費が高くなります。
地域材であれば、調達先が近距離にあるため輸送にかかるコストが抑えられます。港湾を経由しないためコンテナ船の遅延や為替変動の影響を受けにくい点も安心材料です。
●輸送距離が短くなることでのコスト削減
地元産の木材はトラック1台でそのまま現場まで運ぶことが可能です。無駄な積み替えや長距離移動が不要です。
●流通ルートが簡潔で価格交渉がしやすい
地域材の供給元と直接取引がしやすく、中間業者の手数料を省けるケースも多く見られます。
資材調達のリードタイムが短縮されることで、急な仕様変更にも迅速に対応でき現場の柔軟性が向上します。
補助金活用と施工期間の短縮
多くの自治体では地域材の利用を促進するために補助金や優遇制度を導入しています。これらを活用することで初期コストを抑えて導入できます。
●自治体の補助金を利用することで初期投資を軽減
富山県をはじめとする多くの地域では、地域材の活用に対して数十万円単位の補助金が支給される場合があります。
●補助金対象として選ばれやすい公共・民間プロジェクトの事例
学校や公共施設だけでなく、民間住宅でも補助対象となる例が増加しています。
地域材は供給地が近く、納期に遅延が生じにくいため施工スケジュールの見通しが立てやすくなります。
●納期の安定による施工計画の精度向上
輸入材とは異なり天候や通関手続きに左右されにくい点が利点です。
●建築全体の工期短縮による労務費削減
施工期間の短縮は人件費の圧縮にもつながり総合的なコスト削減を実現します。
富山県産材の特性と活用事例
富山県は森林資源が豊富で、国産材の供給地としてのポテンシャルが高いといえます。地域の気候風土に適応した木材は、地元での使用において高い適合性を発揮するでしょう。
富山県産材を活用することは地元経済の活性化やCO₂削減といった社会的価値だけでなく、建材としての機能性やコスト効率の面でも優れた選択となります。
富山県産材の物理的特性と建築適性
富山県ではスギ(杉)が主に使われており、国内で建築用材として広く活用されています。富山産スギは、成長環境の影響から緻密な木目を持ち加工性や仕上がりの美しさに優れています。
●スギの軽量性と加工性
軽量で柔らかく手工具でも扱いやすいため、現場での加工や微調整がしやすくなります。
●寒冷地で育ったスギの強度と耐久性
富山県の厳しい気候条件で育ったスギは年輪幅が狭く、構造材としての強度に優れています。
●杉特有の調湿性と断熱性
湿度調整や断熱効果に優れており、室内環境の快適性を高め省エネ性能の高い建築に貢献します。
加えて、富山県では森林管理の高度化が進んでおり、JAS認証やFSC認証を取得した製品の供給体制も整っています。こうした製品の供給体制により、地域材の品質や信頼性を客観的に判断しやすくなるでしょう。
富山県内の建築事例と地域材活用の成果
富山県内では、公共施設から住宅までさまざまな規模で地域材を活用した建築が進んでいます。学校や道の駅など、人が多く集まる施設での利用が顕著です。
●富山県内の公共建築事例:地域材を全面採用した小学校
教室の内装や床、屋根下地などに地元産スギが採用され、児童にとって快適な学習環境を提供しています。地域住民とのつながりも深まり、木育の場としても機能しています。
●戸建住宅での富山県産材活用:高断熱・高耐久を実現
外壁や軒天に地域材を使用することで、高い断熱性と調湿性を確保。室内の快適性が向上し、住宅の資産価値にも寄与しています。
●地域密着型施設:観光地の木造休憩所
観光地に設けられた木造施設では、富山県産スギの香りと質感が訪問者に安らぎを与え、地域ブランドの一環として評価されています。
富山県産材は機能性・意匠性・地域貢献性の三拍子がそろった建材です。地元で設計・施工するプロジェクトでは、説明責任の観点からも非常に有利に働きます。
ノンビス工法の「美観性」とデザイン自由度が設計の幅を広げる
天然木ウッドデッキの品質や性能は、使用する木材だけでなく、施工方法や仕上げ仕様によって大きく左右されます。
従来の木製デッキはビス留め施工や防腐薬剤の塗布を前提としていました。しかし、現在ではノンビス工法・ノンケミカル仕様といった、新たな価値基準を備えた製品が登場し、設計と施工の可能性を広げています。
ノンビス工法とは、表面にビスを一切出さず、専用の金具で固定する工法です。仕上がりが極めて美しく、モダンな建築デザインにも違和感なく馴染みます。
隠しビス構造がもたらすシンプルで上質な意匠
ビス穴が表面に出ないことで、木材本来の美しさが強調され空間全体に統一感と高級感を与えます。住宅のウッドデッキや商業施設のテラスなど、外観にこだわる空間には最適な仕様です。
素材そのものの美しさを引き立てる設計が可能
天然木のもつ自然な木目や色味を活かしたデザインが可能です。人工材では得られない経年変化による味わいや風格も魅力となります。
●仕上がりにノイズが出ない
ビスの頭が視界に入らないため、どの角度から見ても一貫した意匠が保たれます。
●表面が滑らかで安全性が高い
ビス頭による引っかかりやケガの心配がなく、小さな子どもや高齢者にも安心して使えます。
ノンビス工法は意匠性だけでなく、安全性の観点からも優れた選択肢です。
ノンビス工法の施工性と安全性
ノンビス工法は見た目の美しさだけでなく、現場での施工性や安全性の面でも多くのメリットがあります。ビス留めを必要としないことは施工時の負荷軽減と精度向上につながります。
●施工スピードの向上と均一な仕上がり
専用金具を使った固定方法は手順が標準化されているため、職人の経験に依存せずに均一な品質が確保できます。
●施工ミスのリスク軽減
ビス打ちによる木割れやズレといった施工ミスが起きにくく、結果としてメンテナンス頻度の削減にもつながります。
●メンテナンス性の向上
表面にビスがないため経年劣化しても板の張り替えが容易であり、長期的なコストパフォーマンスも良好です。
●安全性の向上
突出したビスがないためケガのリスクが少なく、子どもや高齢者が利用する施設でも安心して導入できます。
施工者にとっては扱いやすく、施主にとっては安心できる。ノンビス工法は両者にとってメリットの多い工法といえます。
ノンケミカル仕様による環境配慮と健康への影響
ウッドデッキの耐久性を高めるためには、防腐・防蟻処理が施されるのが一般的ですが、薬剤を使わない「ノンケミカル仕様」は、近年ますます注目を集めています。
●化学薬剤を使わない自然な安全性
ノンケミカル仕様では有害な化学物質を使用しないため、施工時や使用中の健康被害リスクが大幅に低減されます。
●屋外利用でも環境への負荷を最小限に抑制
雨水によって薬剤が土壌に流れ出す心配がなく、家庭菜園やペットとの併用も可能です。
●天然木本来の風合いと経年美
薬剤による変色や光沢の変化が起きにくく、木材本来の美しさを長く楽しめる点も魅力です。
●持続可能な森林利用と相性が良い
化学処理をせずとも耐久性を確保できる工法は、素材選びの段階から環境配慮がなされており、SDGsへの貢献にもなります。
ノンケミカル仕様は、建材としての安心感と環境配慮という企業姿勢を両立します。単なる付加価値ではなく、選ばれる理由そのものとなりつつあります。
地域材活用とSDGs・脱炭素社会への貢献
地域材を活用することは、コストや施工効率の面でのメリットにとどまりません。脱炭素社会を目指す現代においては、地域材がもつ環境的価値が企業や建築プロジェクトにとって欠かせない視点となっています。
地域経済の活性化と森林資源の循環
地域材を使用することは、地域の林業・製材業を支えることにつながり、結果として地域経済の活性化に寄与します。計画的な森林伐採と再植林による資源の循環も促進されます。
●地元産業の雇用創出と所得向上
林業や木材加工業に直接的な需要が生まれるため、地域内での経済循環が強化されます。
●森林の健全な管理と災害リスクの低減
伐採と植林のバランスを保つことで、荒廃した森林が減り、土砂災害や山崩れのリスクも抑えられます。
●地域コミュニティとのつながり強化
地元産材の活用は住民との関係構築にも貢献し、地域の一体感を育みます。
森林資源を地域で使い循環させることは、持続可能な社会づくりの原点とも言えます。
建築業界におけるSDGs対応の具体的な取り組み
建築業界は多くの資源とエネルギーを消費する産業です。そのため、SDGsに対応するための施策が求められています。地域材の活用はSDGsの複数項目に直接貢献する手段となります。
●目標12「つくる責任 つかう責任」
持続可能な生産と消費の観点から、地域資源の利用は重要な選択肢です。
●目標13「気候変動に具体的な対策を」
輸送距離の短縮によるCO₂排出量の削減が、気候変動対策に直結します。
●目標15「陸の豊かさも守ろう」
健全な森林管理の推進は、土地利用の保全と生物多様性の確保に寄与します。
地域材活用は「良いことをしている」という道徳的価値にとどまらず、社会的な責任と経済的合理性の両方を満たす、極めて実践的な取り組みなのです。
地産地消が建築業界にもたらすブランディング効果
地域材を活用することは、建物そのものの性能やコスト面だけでなく、企業や設計事務所のブランド価値にも大きな影響を与えます。近年は、地域との関わりや社会貢献性を重視する施主や顧客が増えており、そのニーズに応える形でのブランディングが重要視されています。
顧客への訴求力と地域社会への貢献
地産地消の建築材料を使ったプロジェクトは、その背景にある「地域とのつながり」を明確に示すことができます。施主にとっての安心材料であると同時に、事業者にとっては他社との差別化の武器にもなります。
●地域産材の使用を打ち出すことで、ストーリー性を付加
建物に“地域の木でつくった”という物語を持たせることができ、居住者や利用者に感情的な価値を提供できます。
●地域に根差した企業姿勢を示す手段として活用
地元の資源を使うことで地域社会との共生意識を明確に打ち出し、地元自治体や地域住民との良好な関係構築に繋がります。
●地域材を採用した建築実績が営業ツールになる
自治体や企業に対する提案時に実績として紹介できる建物があると説得力が増し、受注確度が高まります。
環境意識の高まりや地域循環の重要性が広がるなか、地域材の積極的な活用は「見た目の良さ」だけでなく、「意味のある選択」として強く評価されるようになっています。
企業の社会的責任とブランドイメージの向上
企業が地域材を活用することは、社会的責任の遂行という側面でも注目されます。公共事業や官民連携プロジェクトにおいては、CSR的視点やSDGs対応が入札条件や評価項目に組み込まれている場合も多くなっています。
●CSR活動の一環として社外広報に活用できる
地域材活用は自社の社会貢献活動としても位置づけられ、プレスリリースや企業Webサイトなどでアピールできます。
●脱炭素や環境経営の証として投資家・顧客に信頼感を与える
環境配慮の姿勢は企業評価や株主対応にも直結しており、持続可能性のある経営方針を打ち出す一環となります。
●エンドユーザーからの共感獲得によるブランド強化
住宅購入や施設利用の際、ユーザーが「環境に優しい建物である」ことを重視する傾向は年々高まっています。
地域材の導入は建築の実務的な選択肢であると同時に、企業のブランディングや経営戦略の一環として機能するのです。
地域材活用における判断基準と導入のポイント
地域材を実際に導入するにあたっては、品質や供給体制、経済性などを多角的に評価する必要があります。
建築の性能やスケジュールを損なわずに、かつ地域性や環境性を確保するためには、いくつかの明確な判断基準が必要です。
コスト、品質、供給体制の評価方法
地域材といっても品質や価格、供給安定性は地域ごとに大きく異なります。導入の前に客観的な評価が推奨されます。
●価格の比較だけでなくライフサイクルコストで検討
初期費用が若干高くても、耐久性やメンテナンスの少なさで長期的なコストが低くなる場合があります。
●JASやFSCなどの品質認証の有無を確認
信頼性のある第三者認証があることで、構造材や仕上げ材としての性能基準をクリアしているかを判断できます。
●製材所・流通業者の納品体制と在庫力
必要な量を期日通りに確保できるか、急な設計変更に対応できるかといった点も評価すべきポイントです。
これらの基準を明確にし、総合的なコストパフォーマンスを判断することが失敗のない導入につながります。
地域材導入のステップと注意点
地域材導入を成功させるためには、プロジェクト初期段階からの計画的な取り組みが必要です。施工段階になってからの変更は調達や施工法の調整が難しくなるためです。
●設計段階から地域材の使用を前提にプランニング
あらかじめ材寸や仕上げ条件を設計に組み込むことで、後から無理な調整を行う必要がなくなります。
●自治体や林業団体との情報共有と連携
補助金制度の活用や資材調達の相談など、地域の支援を受けることでコスト面の課題もクリアしやすくなります。
●施工業者への早期共有と試作検討の実施
特殊な施工法や仕上げが求められる場合は事前の試作や施工テストが重要となります。
準備段階でどれだけ地域材の特性を理解し、関係者と連携できるかが、導入の成否を分けるカギとなります。
地域貢献と顧客満足を両立できる“今”の価値
地域材による天然木ウッドデッキの導入は、今の時代にこそ求められるといえます。経済的合理性と環境配慮、意匠性のすべてを満たす数少ない製品です。
●国産材の供給安定化と価格競争力の向上
輸入材の高騰に対して地域材は相対的に安定した価格を維持しており、計画の立てやすさも魅力です。
●補助金やSDGs評価に連動した導入メリット
公共案件だけでなく民間案件でも環境評価の高い設計が採用されやすくなっており、地域材はその一助となります。
●仕上がりの美しさと自然素材ならではの満足感
化学処理をしない天然木の風合いは他の建材では得られない独自性があり、施主の満足度を高めます。
設計提案の説得力と差別化を高める
●「地域材を使ったウッドデッキ」という提案がブランド価値に直結
意匠性を重視する住宅や商業施設において、他社との差別化が図れます。
●図面段階から地域材を前提にした設計で評価アップ
地域材を前提としたデザイン提案は自治体や施主からの評価にもつながり、入札・契約時の競争力を高めます。
●将来のリノベーションや補修にも柔軟に対応可能
地域で調達できる木材を使っておくことで、メンテナンスのしやすさや将来的な改修時の安心感も高まります。
まとめ

地域材の活用は、かつてはCSRや環境貢献という利他的な視点から語られることが多くありました。しかし、現代の建築業界においては位置づけが大きく変わりつつあります。
ノンビス工法やノンケミカル仕様の天然木ウッドデッキは、環境配慮と美観、さらには安全性までをも満たす先進的な選択肢として注目されています。こうした製品を計画段階から視野に入れておくことで、より納得感のある提案ができるかもしれません。
建築に求められる価値観が広がるいま、天然木ウッドデッキを取り入れることで、施主との対話や設計の幅を広げるきっかけになるのではないでしょうか。