SDGs視点で進化するウッドデッキ―企業の信頼を築く素材選び
2025.05.08

企業の社会的責任が問われる現代において、環境配慮は企業の信頼性や価値を左右する重要な要素です。
とくに建築や施設づくりにおいては、使用する建材の選定が、企業の姿勢を如実に映し出す指標となっています。
ウッドデッキのような外構設備も例外ではなく、見た目の良さや耐久性に加え、環境や社会への配慮が問われる時代に突入しています。
その中で注目されているのが、ノンビス工法とノンケミカル処理によって作られた天然木ウッドデッキです。
ビスを使用しない設置方法と、化学薬剤に頼らない自然な木材処理により、環境への負荷を最小限に抑えることができます。
トレーサビリティによって木材の出所を明確にし、信頼性を高められる点でも評価されています。
天然木ウッドデッキは単なる屋外空間の装飾ではなく、企業のSDGsやCSR方針を体現する重要な建材へと進化しているのです。
本記事では、SDGs・CSRの視点から見たウッドデッキの選定基準と、企業に求められる素材選定力について詳しく解説します。
SDGs・CSR時代に求められる建材選定とは
建材選定は、企業が社会や環境に対してどのような価値観を持ち、どのように貢献しようとしているかを示す明確な手段です。
消費者や社会の関心が「どのような建物か」から「どのように作られたか」へと移り変わる中、建材の選定がブランディングにも直結するようになっています。
建材に対する意識は、企業の調達方針、労働環境、環境保護への姿勢にまで波及し、サステナブルな調達が求められています。
建材選定が企業の社会的責任を映す理由
●建材は企業の理念を反映する
製品や建物の素材選びは、企業がどのような倫理観と価値観を持つかを示す重要な要素です。
●建築における環境負荷低減の必要性
CO₂排出量や森林資源の保護は、企業活動全体のサステナビリティに関わる課題であり、選ぶ建材でその姿勢を示せます。
●消費者や投資家からの評価に直結
SDGsやCSRに対する具体的な取り組みは、投資家からのESG評価や消費者からの信頼につながります。
社会性の高い建材選定は、プロジェクト単体の評価にとどまらず、企業全体の価値向上へとつながっていくのです。
SDGs目標と建材選定の関係性
SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の中でも、建材選定に直接関係する項目は複数あります。
●目標12「つくる責任 つかう責任」
持続可能な生産と消費を実現するためには、再生可能な資源を使った建材選定が求められます。
●目標13「気候変動に具体的な対策を」
環境負荷を抑える建材を選ぶことで、温室効果ガスの排出抑制に貢献できます。
●目標15「陸の豊かさも守ろう」
違法伐採や過剰な森林伐採を避け、森林資源を守る木材選定は、目標15の達成に寄与します。
これらのSDGs目標と建材選定の接点を理解することで、企業は社会的責任を果たしつつ、持続可能な社会の構築にも貢献できるのです。
ノンビス工法・ノンケミカル処理の天然木ウッドデッキが選ばれる理由
建材選定において環境への配慮と安全性の両立は重要なテーマです。とくに天然木ウッドデッキの分野では、ノンビス工法とノンケミカル処理の製品が注目されています。
これらの技術は、従来のウッドデッキに見られた施工上の課題や、化学薬剤による健康リスクを回避しつつ、環境への負荷も軽減するものです。
ノンビス工法による美観と安全性の両立
ノンビス工法とは、ウッドデッキの設置時にビス(ネジ)を一切使用しない施工方法です。この工法には次のような特長があります。
●表面の美観を損なわない
ビス穴が表面に現れないため、木材の質感をそのまま活かした美しい仕上がりになります。
●ビスによるサビや腐食のリスクを回避
金属を使わないため、雨や湿気によるサビ、膨張による割れの心配がありません。
●歩行時の安全性が向上
ビスが浮いてくる心配がなく、小さな子どもや高齢者でも安心して歩けます。
見た目と機能性の両面で優れたノンビス工法は、意匠性とユーザーの安全を重視する現場に最適です。
ノンケミカル処理がもたらす環境と健康への配慮
木材の防腐・防虫処理には、従来化学薬剤が使用されることが一般的でした。しかしノンケミカル処理では、以下のような配慮がなされています。
●揮発性有害物質を排除
化学薬剤を使用しないため、VOC(揮発性有機化合物)などの発生がなく、室内空気環境にも悪影響を与えません。
●接触による健康リスクを防止
子どもやペットが触れる機会の多いウッドデッキにおいても、安全に使用することができます。
●自然な経年変化を楽しめる
薬剤による色や質感の加工がないため、天然木本来の風合いを保ちながら、時の経過とともに深みが増します。
ノンケミカル処理は、環境保全と人の健康への思いやりを体現しており、企業の社会的責任を強く示す選択肢です。
天然木の耐久性とメンテナンス性の高さ
天然木ウッドデッキに対して、「メンテナンスが大変」「耐久性が心配」といったイメージを持つ人も少なくありません。
しかし、適切な樹種と設計技術を用いることで、天然木でも長期使用に耐える高性能なデッキを実現できます。
●耐久性に優れた富山県産スギの活用
富山県産のスギは、富山県の気候などに影響を受け重厚で強度が高く、屋外使用にも耐える素材として高評価を得ています。
●水はけ設計と乾燥対策の工夫
構造設計により雨水を溜めず、風通しの良い構造にすることで、腐朽やカビのリスクを大幅に軽減できます。
●定期的な清掃のみで美観を維持
ノンケミカル処理で木材表面がコーティングされていないため、汚れが蓄積しにくく、清掃の手間も最小限です。
耐久性と手入れのしやすさを兼ね備えた天然木ウッドデッキは、長期的な視点で見た際のコストパフォーマンスにも優れています。
木材トレーサビリティが企業価値と信頼性を高める
建材の調達において、近年特に注目されているのが「木材トレーサビリティ」の確保です。どこで伐採され、どのように流通し、どのような形で使用されたかという履歴を追跡可能にする仕組みは、企業の透明性を高めると同時に、環境と社会に対する責任を明確に示す手段となります。
トレーサビリティの重要性とその仕組み
トレーサビリティとは、製品の生産から流通、使用に至るまでの履歴を一元的に管理・証明できる仕組みのことです。
●違法伐採の排除と合法性の証明
森林破壊の一因である違法伐採材の使用を回避し、合法的な供給源から調達したことを証明できます。
●持続可能な森林管理の後押し
認証された森林から調達された木材を選定することで、森林資源の保全と再生産が可能になります。
●サプライチェーン全体の信頼性向上
加工・流通業者を含めた流通履歴が明らかになるため、関係者全体での責任ある調達体制が構築されます。
このような仕組みを導入することは、単に法令順守のためではなく、企業ブランドの信用力を高める明確な根拠となります。
企業の透明性とサステナビリティへの貢献
木材トレーサビリティの導入は、企業の持続可能性に対する本気度を社会に示すメッセージとなります。
●ステークホルダーへの明確な情報提供
株主や顧客、行政などの関係者に対して、調達過程の透明性を具体的な数値や記録で示せます。
●ブランディングや広報活動への活用
トレーサビリティの取り組みを積極的に発信することで、企業の環境配慮型ブランドとしての地位を確立できます。
信頼性の高い木材を使っているという事実は、製品の付加価値を高めるだけでなく、企業の姿勢を社会に伝える有効な手段となるのです。
地域材の活用がもたらす経済性と環境配慮
天然木ウッドデッキにおいて、地域材を活用することは、単に素材選定の選択肢を広げるだけでなく、企業や地域社会に多くのメリットをもたらします。輸送距離を抑えた調達と地場産業への貢献は、環境負荷の軽減と地域経済の活性化という二重の価値を生み出します。
地域材使用によるコスト削減と物流効率の向上
●輸送コストの削減
調達地から施工地までの距離が短いため、輸送にかかる燃料や費用を削減できます。
●納期短縮によるプロジェクト効率化
地域で流通する素材を使用することで、資材の手配や納品が迅速になり、工程管理がしやすくなります。
●在庫リスクの軽減
地元材であれば、必要なときに必要な分だけ調達しやすく、過剰在庫や欠品リスクのバランスが取りやすくなります。
コスト面の合理性と施工スケジュールの確実性を同時に実現できる点は、発注側にとって大きな利点です。
地域経済の活性化と森林資源の循環
●地域林業への直接的な貢献
地域の山林を活用することで、林業関係者の雇用維持と林業経済の持続可能性に寄与できます。
●森林資源の健全な循環サイクルを構築
計画的な伐採と植林による森林管理が進み、生態系の保全と再生産が促進されます。
●地域とのつながりを活かしたブランディング
企業が地域の資源を活用する姿勢は、地元との関係強化や地域からの信頼獲得にもつながります。
地域材の活用は、単なる建材調達を超えて、地域社会と共に持続可能な未来を築く重要な戦略といえます。
設計事務所・工務店が提案すべき社会性を含む付加価値
設計事務所や工務店がクライアントに対して提案を行う際、コストや意匠性だけでなく、「社会性」を意識した提案が求められる時代になっています。とくにSDGsやCSRが企業活動の重要な柱となっている今、建材における社会的価値の提案は、他社との差別化やクライアントからの信頼獲得に直結します。
社会性提案が建築・設計の新たな差別化要素に
社会性を意識した建材提案は、設計・施工事業者にとっての競争力向上にもつながります。
●単なる施工業者から「価値提案者」へ
社会性を含んだ建材の提案により、クライアントの企業理念やCSR方針と調和する設計が実現し、より深い信頼関係が築けます。
●公共案件や大手企業との取引機会の拡大
環境配慮やSDGsに基づく調達基準を重視する発注者に対して、加点要素として大きく評価される可能性があります。
●提案内容のプレゼンテーション力向上
社会性という明確な軸を持つことで、建材選定における説明内容が具体的かつ説得力を持ちます。
これからの建築・設計提案においては、建材自体のスペックに加え、それがもたらす「社会的意義」をどう伝えるかが問われるようになります。
まとめ

SDGsやCSRといった社会的テーマが企業活動の中心となる中、建材選定の重要性はますます高まっています。
その中でも、ノンビス工法・ノンケミカル処理の天然木ウッドデッキは、環境と健康への配慮、美観と安全性の両立、木材トレーサビリティによる信頼性の確保といった点で、時代の要請に合致した建材といえます。
地域材の活用によって環境負荷を抑えつつ、地域経済に貢献するという点でも、非常に高い付加価値を持っています。
設計事務所や工務店がこのような建材を提案することは、単なる設計・施工の枠を超え、企業や施設の社会的評価を高める取り組みそのものになります。
今後の建材選定においては、素材の品質や施工性に加え、「社会性」という新たな視点を持ち込むことが、設計や施工の提案力を大きく左右する鍵となるでしょう。
天然木ウッドデッキは、企業の価値観と社会的責任を明確に伝えるメッセージであり、建築空間における新たな「企業姿勢の表現手段」として、ますます重要な存在になっていくはずです。